デジタル・ルネッサンス:アカデミズムはバージョンアップする

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昨日は http://astamuse.com/  という知材のデータベース化とイノベーションの創発を活性化するサービスをやっている以前の同僚と会っていました。その中でアカデミズムのあり方についていろいろと議論をしたので、ここにメモを残しておきます。

僕は大学というプラットフォームでアイデアの実用化をやろうとしましたが、研究資金が途中で尽きてしまう、研究者のキャリアへのインセンティブがない、製品化に必要なスキルやリソースが足りないといった理由でそれは実現できませんでした。 “デジタル・ルネッサンス:アカデミズムはバージョンアップする” の続きを読む

アトモスデザイン設立のご挨拶

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本日2014年3月3日、株式会社アトモスデザインの設立を行い、私児玉哲彦が代表取締役に就任することをご報告します。

アトモスの企業理念は、

UXで地球をスマートにデザインする

です。

私達人類は、この地球という星の資源を利用する文明を発達させ、発展と繁栄を謳歌してきました。20世紀という時代はその頂点だったと言えます。しかしながら、文明のあまりにも急激な進歩は、食料やエネルギーなどのこの星の限られた資源を使い果たす際に向かいつつあり、また原子力エネルギーの管理など、私達の繁栄のための道具だった文明の行き過ぎがむしろ新たな脅威となってきています。

この課題に対処するためには、各国政府や企業、専門家の努力はもちろんですが、最終的には文明の恩恵を受ける私達一人一人のライフスタイルが、地球の限られた資源や、文明が生み出してきた技術の力を、賢く利用して持続可能なものへと変わっていく必要があります。

では、このようなライフスタイルはどうすれば実現できるでしょうか。その実現のために、アトモスデザインでは、半導体の進歩(ムーアの法則)とネットワークの進歩(メトカーフの法則)に支えられた、情報技術の進歩が重要なコンポーネントであると考えます。情報技術のイノベーションは、資源の分配=取引に伴う摩擦を減らし、全体としての最適配置に近づけることを可能にします。それは資源を有効活用した持続可能なライフスタイルを実現すると同時に、私達が生活の中で感じるさまざまな面倒や手間を軽減してくれるものとなるでしょう。

情報技術のこのようなポテンシャルには大きな期待が寄せられていますが、実際の生活の中での情報技術の活用はまだまだ端緒についたばかりです。今後も、情報技術はウェアラブル機器や組み込み機器、センサーネットワークなどの多様な形をとって生活空間に浸透していくことが予想されます。

一方で、これらの新技術の多くはこれまでも普及せずに埋もれていきましたし、これからも多くがそうなることでしょう。これまで人々のライフスタイルの中に情報技術によるイノベーションを根付かせてきた事例−パーソナルコンピュータ/インターネット/スマートフォンなど−においては、何が違ったのでしょうか?それは、Mac、NCSA Mosaic、iPhoneなどの製品において、専門家でない生活者が技術のメリットを利用できるようになる適切なユーザー体験(UX)がデザインされたことです。

代表の児玉は、10代の頃から20年間にわたって、インタラクティブなUXのデザインを探求してきました。このたび、情報技術のイノベーションの実用化にさらに幅広く貢献したいという思いから、アトモスデザインを設立し、用(実用性)・強(技術的実現性)・美(知覚的満足)のすべてを満たすUXデザインを実現していきます。

−−30億年前、私達の遠い祖先の中に、光合成して酸素を作り出す生物が現れました。それまで主に二酸化炭素で覆われていた地球の大気は、長い時間をかけて酸素の割合を増やしていきました。生物は、酸素を利用することで効率的にエネルギーを作り出せるようになったことで複雑に進化し、またオゾン層を形成して紫外線から身を守れるようになったことで陸上へと進出することが可能になりした。このように、私達の祖先は自ら作り出した酸素によって地球の大気=Atmosphereを作り替え、今日の私達へと連なる生物の進化と繁栄をもたらしたのです。

今日、電子ネットワークは、原子(=Atom)の核の周りの電子のように、地球の周りを巡り、コンピューターとネットワークの中に閉じるのでなく、各種のI/Oを通して物理的な(=Atomの)世界と繋がって私達がより繁栄できるように制御するOSとなりつつあります。そんな第二のAtmosphereを作り出す。アトモスデザインでは、志をともにするみなさまと、そのようなイノベーションと、事業としての成功を実現していきます。

2014年3月3日 麻布十番にて

株式会社アトモスデザイン 代表/デザイナー 児玉 哲彦

Reality 2.0:現実がインタラクティブになる日

ARはただのhypeだったのか?

僕は以前に、頓智ドット株式会社にていわゆる拡張現実(AR)サービスのセカイカメラの開発に関わっていました。同社が大きな資金調達に成功したことに象徴されるように、ARは世界を変える技術として大きなブームを巻き起こしましたが、実際には期待されたほど使われずにブームが収束してしまいました。

一つの理由としては、SF映画やアニメなどでAR的な技術に対して抱かれてきたイメージは強烈で、それと比べて今日のスマートフォンなどで可能なARの体験が限られたものでしかないことが挙げられます。まだまだ未成熟な技術であることは否めないでしょう。

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UI/UXのUって誰?プロダクトに関わるのはエンドユーザーだけじゃない

今日は、いつもと趣向を変えて、UX Advent Calendarの担当日として書かせていただいています。そこで、少し自分の来歴も織り交ぜながら、UXという仕事について思うところを書こうと思います。

私は慶應のSFCで長くモバイル/ユビキタスのUI/UXを研究した後、頓智ドット株式会社にてセカイカメラとtabのUXを担当し、現在はフリービット株式会社にて製品およびウェブのUI/UXを担当しています。多くの活躍されているUXデザイナーの皆さんの中で僭越ですが、アカデミズムの立場で長くやってきたこと、またWebではなくアプリやハードのような製品に取り組んできたことから、そうしたちょっと変わった視点でお話ができれば、と思います。 “UI/UXのUって誰?プロダクトに関わるのはエンドユーザーだけじゃない” の続きを読む

映画「スティーブ・ジョブズ」を観て

映画「スティーブ・ジョブズ」

公開開始の週末に観に行ってたんですが、忙しすぎてなかなか感想を書けませんでした。感想そのものは、他の多くの方が書かれているのと変わりません。アシュトン・カッチャーはジョブズの仕草やしゃべり方の特徴をうまくとらえていて思ったよりも好演でした。1984やMacの発表などの瞬間はやはり胸をアツくさせてくれるものがあります。

ただ、この映画の編集はいただけない。あれだけのドラマティックな人生を丸ごと2時間に圧縮するのはやはり無理があったようで、断片的なカットを繋いだだけのような映画になってしまっています。 “映画「スティーブ・ジョブズ」を観て” の続きを読む

若者のTwitter炎上を、デザインの視点から考えてみる

おバカな若者

バイトなどの若者が、バカをやってソーシャルメディアに投稿して炎上することが話題になっています。散々話題になっているにも関わらず問題の発生が相次ぎ、ついに週刊誌などのマスメディアも取り上げるようになってきました。

この問題については、色々な視点からの意見があります。曰く、若者のモラルが低下している低賃金な非正規雇用が増えたから世間の空気が過剰反応するように変わってしまった、など。ただ、こうした行為の理由を社会の変化に求めるのは無理があるかと思います。若い奴はバカをやるもので、それはそれだけのことでしかありません。

ただし、スマートフォンやソーシャルメディアが広く普及したことで、内輪の悪ふざけが世の中に拡散してしまう、という違いは発生しています。その中でも、リテラシーの不足から、情報をパブリッシュすることの怖さをわかっていない、という議論には頷けるものがあります。 “若者のTwitter炎上を、デザインの視点から考えてみる” の続きを読む

tabのインタラクションデザインについて:研究と実業の境界で

tab

前職で開発に関わった、頓智ドットのtabが、伊勢丹と提携を結びました(東洋経済オンラインの記事)。tabは、街についての情報をウェブ/リアルからクリップし、興味関心のテーマ単位でまとめて共有する「My雑誌」サービスです。iPhone/Android/iPad/Web向けに提供されています。2013年7月時点でパートナー企業約190社、アプリのダウンロード数は30万超、アクティブユーザーは17万にのぼっているとのことです。

tabは、O2O(Online-to-Offline)サービスの一種であると言えます。サービスを通して、ウェブに散らばった街についての興味深い情報に触れることができ、結果的にイベントに行ったり、商品を買ったりといった行動に結びつけることができます。国内で、消費に占めるECの割合は3%弱(経済産業省発表)といわれており、97%の消費活動は現実の世界で起きています。この商流にインパクトを及ぼすことができれば、その経済的なインパクトは多大なものになるでしょう。このような背景から、O2OはITの成長領域として注目を集めています。

tabのインタラクションデザインにおいては、私がこれまでに慶應義塾大学インタラクションデザインラボなどで行ってきた研究のアイデアが色々と取り込まれています。それらがどのように商業的なサービスに取り入れられていったか、述べてみたいと思います。 “tabのインタラクションデザインについて:研究と実業の境界で” の続きを読む

フラットやレスポンシブは流行りものか?

ウェブやアプリのデザインの業界では、フラットデザインが大きな注目を集めており、新たな事例を目にしない日はないほどです。よく対比される、リアル系デザインの牙城だったAppleのiOSも、次バージョンの7でデザインを全面的にフラットに刷新することがアナウンスされています。

iOS7のホーム画面

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はじめに:体験をデザインするということ

2013年の夏、私児玉哲彦はデザイナーとして日本のIT企業で働いています。これまでは、モバイルアプリのスタートアップで働いたり、大学でUIデザインの研究に携わったりしてきました。気付けば、20年ほどインタラクティブな体験のデザインに取り組んできました。 “はじめに:体験をデザインするということ” の続きを読む