Creative Confidence:誰もが持っている創造性を解き放つ


クリエイティブマインドセット表紙

ATOMOSも創業から七ヶ月、おかげさまでここまで順調にお仕事をさせていただいています。思えば自分がクリエイティブな仕事で身を立てていることが、実は自分にとってはけっこう意外だったりします。

小学生の頃、僕は勉強はわりと得意でしたが、周りには絵や音楽ができたり、面白い遊びを思いついたりする子もたくさんいて、自分のことは大して面白くもない人間だと思っていました。中学受験も終わり、なんとか志望校に入ったところで、一度勉強から解放されて何かクリエイティブなことをやってみようと思いました。合格祝いにはじめてのカラーのMacを買ってもらったので、コンピューターグラフィックを始めました。

リトル児玉に聞いてみたら、自分がデザイナーになると言っても信じなかったでしょう。父親がそうであるように研究者にでもなると思っていました。でも、僕は安いMacでものづくりの楽しさに魅了され、その後いわゆる勉強に戻ることはついぞなく、今日に至ってしまいました。

さて、今日の世界で創造性の一つの代名詞となっているのが、デザインスタジオのIDEOです。初期のAppleのためのデザインをはじめ、数々の革新的な製品やサービスをデザインしてきました。その創業者のディヴィッドとトムのケリー兄弟が書いた、創造性についての本。こう聞くと、おそらく華々しい天才デザイナー達の活躍の記録かと思うかもしれません。

ところが、本書に登場するのは、医療機器の開発者やエンジニアリングの学生、会計士の資格を持つP&Gのマーケティング担当者など、いわゆる「クリエイター」「デザイナー」ではないと自他ともに思っていた人達。彼ら彼女らが、ケリー兄弟をはじめとするIDEOの活動に接する中で、自分の中に眠っていた創造的な問題解決の力に目覚め、医療機器を子供が喜ぶものにしたり2000万ダウンロードのアプリを作ったり大企業の組織文化を変革したりするに至る。そうした事例と、そこから学ばれた教訓や方法論がまとめられています。

著者らの根底にある考えは、創造性というのは特別な天才だけが備えているものではないが、多くの人が創造的な活動に取り組んだ経験が乏しい、その結果自分には創造性などないと信じ込んでいるために創造性が発揮できない、というものです。そのために、小さくともいいので創造的な活動を実践することで、内に秘めた創造性を積極的に発揮できるようになる。これが、本書の原題である「Creative confidence」ということばの意味です。

思えば自分自身も、まさにこのCreative confidenceを時間をかけて身に付けたのだと思っています。また、自分だけでなく、Creative confidenceによってキャリアが大幅に前向きに変わった人をたくさん見てきました。

一人は、高校の同級生で、当時からどんなゲームを作りたいかといったことを二人でずっと話していました。大学卒業後はあまり一般的な就職をせず、どうなるかと思っていたのですが、いくつかのゲーム会社のインターンなどを経験したあと、個人でゲーム企画/開発の会社を起業し、今では作ったゲームが香港のApp Store一位になるなど、独立系を代表するゲームデベロッパーになりました。

また、大学の同級生で、卒業は大手グループのシステム開発の仕事に就いたのですが、ARなどを仕事にしたいと相談されたことがあります。やりたいならまずは自分でプロトタイプでも作ってみたら、とアドバイスしたのですが、多くの人はそうしたことを言っても実践することはないので、しばらく忘れていました。すると、しばらくして、実際にHMDなどを使ったプロトタイプを作ってきました!その後グループの中で、プロトタイプが興味を持たれ、ARのR&Dのポジションに異動して今でも活動しています。

大学の後輩で、ビジネスモデル研究などのゼミにいた人がいるのですが、ビジネスモデルだけではなくプロダクトを作った方が面白いと言って自分たちの活動に引っ張り込んで一緒に製品を作った人がいます。その後やはりシステム系の会社に就職したのですが、海外で活動したいということでアメリカの技術系のトップ大学に留学し、今ではシリコンバレーの有名サービス企業でエンジニアとして働いています。

それぞれの人が、大変な努力で成功したのは言うまでもありません。でも、その根底にあるのは、何かを自分で作ることができる、小さくてもいいからその一歩を踏み出した、その経験にあったのではないかと思っています。自分がクリエイティブな人間ではないとか、クリエイティブな仕事ではないと思っている人にこそ、本書を読んで、そして読むだけでなく一歩を踏み出してほしいほしいと思います。きっと今の仕事やキャリアに、前向きな変化が訪れるものと思います。