書評:SF映画で学ぶインタフェースデザイン


(本書は訳者の皆様から献本のほどをいただきました。)

Google Glassやスマートウォッチなど最近話題のガジェットに触るとき、「スタートレック」や「007」などのSFの世界がいよいよ到来したように感じることがあります。思えばiPhoneやiPadが登場したときも、まるで映画に登場する未来のコンピュータのようだと感じさせられたものです。技術やリソースの制約のないフィクションの世界では、理想化されたUIというものを表現することができ、それらは往々にして現実のインタフェースデザインを刺激してきました。

本書は、実際のインタラクションデザイナーである著者二人が、SF映画に登場する機器のUIを調査し、そこから得られるデザイン上のレッスンをまとめたものです。

SF映画で描かれるインタフェースからは、今現実にはない斬新な発想を得られるというメリットがあります。一方で、それは当然ながら現実の問題を解決するデザインではなく、往々にして画面上の視覚的な効果の方が優先されています。そうした制約を意識しつつ意味のあるレッスンを得るために、著者らは以下の4つのアプローチをとりました:

  1. ボトムアップ
    個々のインタフェースの詳細な調査
  2. トップダウン
    全ての事例にタグを付けてタグクラウド化
  3. 類似性の追求
    作品間の類似性に注目し追求
  4. 弁証学
    表現されているようには動作しないだろうというインタフェースがどうすればそのように動くか説明を与える

当然のことながら、現実に近いUIの事例ほど、よいレッスンを得られることになります。Kinectなどが今ほど普及する前に公開された「マイノリティ・レポート」におけるジェスチャーUIは、実際のインタフェースデザインに大きな影響を与えました。また、iPhoneなどの登場以降UIにおけるアニメーションの利用は以前より広がりましたが、映画の中の表現は一般的にリッチなアニメーションを用いており多いに学ぶところがあると言えます。

また興味深い内容としては、SF映画の中のUIでは音がよく活用されています。(本書の例で言うと、「未知との遭遇」においてメロディーが認証キーとして用いられている例など。)が、現実のUIでは公共の場で利用するという制約などもありまだ十分に活用されているとはいいがたく、今後の発展の可能性があります。

デザイン上のレッスンに加えて、「新スタートレック」において、大道具に前作のほどの予算が投じられなかったために、結果として機械式のスイッチでなく安価に実現できるタッチスクリーンのUIが用いられたという裏話などは興味深かったです。UI/UXデザイナーには、ガジェット好きなどが多く、SF好きの方も多いことと思います。そうした方に取っては、SF映画の歴史の中でどんなUIが登場してきたかを知るだけでも読み物として十分に楽しめる一冊となっています。

一方、Brain Machine Interfaceや医療など、UIの表現というより実現までの技術的なハードルが高い内容については、あまり有意義なレッスンが得られているとは言いがたく、アイデアの羅列にとどまっている感は否めません。

本書の原題は「Make It So」。「新スタートレック」において、ピカード艦長が使う「発進!」という意味のセリフからきています。SFによって広げられたイマジネーションを、現実のカタチになるよう前に進めるよう、私たちデザイナーを鼓舞しているかのようです。