Google Material Designのファーストインプレッション


先月のGoogle I/Oで、Googleの新たなデザイン言語「Material Design」と、それを適用したAndroidの新バージョン「L」などが発表されました。Keynoteのビデオを見る、Google Designサイトを読み込む、Nexus 5にAndroid Lのデベロッパープレビューを入れて触るなどしてみたので、ファーストインプレッションを書いてみます。なお、Android Lはプレビュー版であり、多くのアプリはまだMaterial Design化されておらず、ラフな感想であることを断っておきます。

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Materialの意味するところ

情報機器のUIにおいては、すっかりフラットデザインが普及しました。背景としては、モバイルの小さい画面を含む多様なデバイスへの対応、コンテンツを重視したサービスの増加およびタッチなどのジェスチャインタフェースの増加などが挙げられます。これらの結果として画面上のUI要素の表現から凝った陰影やシャドウ、テクスチャーなどを排除し、単純化/最小化することが進んできたのが、フラットデザインと言われるトレンドです。

しかしフラットデザインには、見た目の表現から物理的なメタファーが減ったため、画面上のどの要素がどのように操作できるのか、というアフォーダンスが与えにくくなるという問題がありました。その最たる例がWindows 8でしょう。後続のiOS 7では、そのような問題に応えて、画面内のオブジェクトの立体的な奥行きを半透明効果とパララックス(視差)効果を用いて表現することが試みられています。

Material Designも、フラットデザインのトレンドに則りながら、画面内の要素に対して人間が物質(=Material)に対して持つようなアフォーダンスの実現を目的としているように見えます。それが、Material Designという名前の由来と考えられます。


Material Designのコンセプト動画

物質的な奥行き

Material Designの大きな特徴として、画面内の奥行きの概念をiOS 7以上に積極的に取り入れています。Android Lのオブジェクトは、画面内のXY座標に加えて画面の奥行き方向のZ座標の関係が明示されています。Z座標の位置関係に応じたドロップシャドウの濃さによって高さが表現されています。デベロッパープレビューで試せる範囲では、通知やアプリ切替にZ座標を用いた表現が活用されています。

このような奥行きの表現は、どのようなタッチのジェスチャを行えるかを伝えるうえで有用です。

Android Lのタスク切替

Android Lの通知

意図を感じさせるアニメーション

また、こちらもiOSの方が進んでいたアニメーションの表現も積極的に取り入れようとしています。Material Designにおけるアニメーションは、要素の連続性や関係性を表現するために用いられるようです。まず、個々の画面やアプリを超えて連続するアニメーションを作れるようになったことは、アプリ間の連携が優れているAndroidにおいては有用だと考えられます。また、タッチの結果がどうアプリの状態に作用したかという関係性もアニメーションのフィードバックで示すようになるようです。

アニメーションの例

例:再生ボタンをタッチするとボタンが変形アニメーションしてプレーヤーに変わっていく

色/タイポグラフィ/レイアウトの精緻化

フラットデザインでは、印刷物の世界で用いられてきた色/タイポグラフィ/レイアウト等のテクニックが取り入れられており、Material Designもこのトレンドに則っています。アプリ毎のカラーパレットの定義が可能となる、鮮やかな色彩が推奨される、タイポグラフィのスタイルの定義がより細かくなる、画面内のグリッドが定義される、余白の活用が推奨されるなど、他のプラットフォームでも見られるオーソドックスな手法が用いられています。

Android Lの電話アプリ

Android Lの計算機

マルチデバイス

Material Designが今後重要になるのは、Googleの進めるマルチデバイス展開においてです。車/テレビ/PC/タブレット/スマホ/腕時計/グラスなど、Googleが開発を進めるあらゆるプラットフォームでMaterial Designが用いられます。このような多様なデバイスにおいては、必ずしもタッチUIが適しているとは限らず、テレビや腕時計などでは音声認識も用いられます。またマウスやキーボードでの操作も「ファーストクラス」の入力手段とされています。

マルチデバイスへの展開

デザイナーのチャレンジとチャンス

Material DesignではUIの表現は間違いなくフレッシュで気持ちよくなります。なんといっても世界No.1シェアのOS、より多くの人によいUIを届けられるようになるのはよいことです。一方でAndroid Lのプレビューはデベロッパー向けであり、一部を除いてGoogle純正のアプリもMaterial Design化されていません。対応アプリが増えてきたらもっと違うかもしれませんが、スマホに限ればAndroidはAndroidであり、たとえばiOS 6からiOS 7の変化など以上に大きな変化とは感じられません。

また、多様なデバイス向けにサービスを統一されたUXで展開しやすくなります。今後のITはスマホ以外のモノへの広がっていき、Androidはそのためのプラットフォームとしてもっとも有望に見えます。Google I/OにおいてMaterial DesignがWear / Auto / TVなどのプラットフォームと同時に発表されたのは、このような意図があるのでしょう。

モバイルアプリの普及によって、国内でもUX / UIデザインの必要性が高まってきました。今後のUX / UIデザインは、マルチデバイス化 / 入力UIの多様化 / 奥行きや動きの活用 / クリエイティブの精緻化などかつてなく複雑な仕事になります。デザイナーはそれらのスキルを身に付けていかないとなりません。一方で、それができるデザイナーはかつてない大きな役割が与えられるでしょう。Material Designは、そんなデザイナーにとっては大きなチャレンジとチャンスの到来を告げています。