ロボットの汎用OSとは?V-Sidoの挑戦


ソフトバンクが感情的なコミュニケーションを行う人型ロボットPepperでロボット事業に本格参入すると発表して話題を呼んでいます。続いて本日、グループ企業のアスラテックが、増資を行ってロボットOS「V-Sido」の本格的な商業展開を行うと発表しました。発表会にご招待いただいて参加してきました。

これは実はPepperの発表と同等のインパクトのある内容なのですが、Pepperの発表会ほどわかりやすくインパクトのあるデモでなかったことなどもあり、質疑応答を聞いていてもその狙いがメディアにもあまり伝わっていないようでした。

アスラテックがV-Sidoでやろうとしていることを理解するには、デジタル機器における汎用OSの役割とは何か、を理解する必要があります。その歴史を振り返りながら、解説をします。

OSとは、ハードウェアを抽象化するためのもの

私たちが使っているコンピュータの中では、CPUやメモリといったハードウェアが計算処理を行い、様々なサービスを提供してくれます。しかし、ハードウェアに計算処理を行わせるためには、CPUが理解できる機械語でコマンドを送ったり、メモリの個々のアドレスを直接指定するなどする必要があります。ソフトを書く際に、いちいちこのような記述を行っていては、今日利用されているような複雑なアプリはとても実現できないでしょう。より効率的にソフトを開発するために、コンピュータのハードウェア機能を抽象化する層としてのOSが作られました。

これをロボットに置き換えて考えてみると、ロボットはサーボモーターなどのアクチュエーターの塊です。ロボットに何かをやらせるアプリを書く際に、個々のモーターの振る舞いを記述しろと言われたら、ロボットの専門家以外には作れなくなってしまうでしょう。V-Sidoは、行わせたい動作をジェスチャーなどで指示することで、ロボットの関節角度を自動的に決定し、望むような動作をさせることができます。個々のサーボモーターの制御などは、アプリの開発者からは隠蔽されます。(ソフトウェアからはロボットは剛体リンクモデルとして扱われるとのことです。)

人ととロボットをつなぐOS

汎用OSの登場:Write once, run anywhere

OSが利用されるようになった最初期には、個々のコンピュータは個別のOSを備えており、それぞれに合わせたソフトウェアを開発する必要がありました。世界にコンピュータが何台もない時代には大した問題にはなりませんでしたが、コンピュータがより広く利用されるにつれて、幅広い性能を備えたラインナップが求められてくるようになりました。このような多種類のコンピューターに対して、必要なソフトをすべて個別に書かなければならないとしたらこれもやはり効率が悪いです。そこで、多種類のコンピュータのハードウェア上で利用できる、汎用OSが登場しました。IBMのOS/360がこの最初のものと言われています。

V-Sidoは、特定のハードウェアに依存せず、ロボットのための汎用OSとして提供されます。油圧かサーボかといった駆動方式や、関節の数、また場合によっては人型でない、4本腕のロボットなども制御することができます。(これがアスラテックという社名の由来だそうです。)これは、ロボット産業の発展のためには重要です。すなわち、一度V-Sidoを搭載したロボット向けに動作を定義すれば、他のロボットでも同じ動作をさせることができるようになるためです。

V-Sido Connect

OSが提供する統一されたLook & Feel

1980年代に入ると、Mac OSやWindowsのようなGUI OSが登場してきました。GUIの導入によって、アプリはそれまでよりも複雑なUIを実装することがもとめられるようになりました。そこで、OSに新たに導入されたのが、UIのフレームワークです。UIフレームワークを用いることで、個別のアプリでUIのLook & Feelや品質がかなり揃ったことと、その分個々のアプリ開発者の開発負担が軽減されました。

ロボットの場合でも、そもそも二足歩行ロボットを自立させて安定して動かすことが大変です。V-Sidoはここに強みを持っており、いろいろな環境でいろいろな動作をさせても、安定して自立させることができます。開発者毎にいろいろな動作をするアプリを作ったとしても、最低限の安定と、結果的に安全性が保障されます。

V-Sidoの特徴 リアルタイム/安定化/効率化

まとめ

このように、V-Sidoを用いると、
・ハードウェアを直接制御せず
・ロボットのモデル間の違いを吸収し
・かつ最低限安定して動く
アプリを、ロボットの専門家以外でもソフトウェアの開発ができればできるようになります。また、同じアプリがV-Sidoを搭載したロボットで動くようになるため、例えばAndroidスマホのように多数のメーカーによるエコシステムを形成できるようになります。

リッチなアプリを開発できるスマホによってモバイルコンピューティングが爆発的に普及したように、V-Sidoが多数の開発者がロボットアプリを開発できる汎用OSとして確立すれば、ロボットの利用が一気に広がるという可能性はあります。V-Sidoは、このようなポテンシャルを秘めたプラットフォームです。

アプリ/サービスの開発者としては、このようなプラットフォームでどんなアプリを作れるか考えてみたいと思います。今なら、LINEのようなキラーアプリケーションが作れるかも!

アスラテックの皆さん


One thought on “ロボットの汎用OSとは?V-Sidoの挑戦

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