メソッドよりも人の気持ちが大事。「申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。」感想


コンサルティングへの疑問

最近デザインコンサルティングの会社を創業した者として、タイムリーだったので買ってみたところ、とても面白く読めました。

僕は短期間ながら国内のコンサルティングの会社に勤めたことがあります。また、IT業界にもコンサルティング業界の出身者はたくさんいます。当然のことながらその人達の中には、事業に貢献できる人もいれば、そうでない人もいました。ただ、いずれの場合にも共通していたのは、ロジックに基づき人を説得する能力が高いことです。すると想像できる通り、良い方向にも悪い方向にも事業を引っ張ることになります。

本書の主張は、この悪い方向に引っ張るケースの経験と共通した場合が多かったです。フレームワークやメソッドを教条主義的に適用し、その事業や組織の状況、何より実際に動く人の気持ちをないがしろにする。結果的に、現場においては明白な問題を見落としたり、メンバーのモチベーションを損なってプロジェクトが失敗したり人が組織を離れてしまったりする。このようなケースを、残念ながら結構な頻度で見かけます。

本書の主張にもある通り、最悪なのは目標管理などの人事考課の世界でしょう。このあたりは、城繁幸さんの「内側から見た富士通「成果主義」の崩壊」なども参考になります。短期的な数値目標による評価は、単純作業の繰り返しならいざ知らず、創造性の求められる仕事においては百害あって一利なしです。

僕が専門にするUX/UIデザインや、システム開発、ITスタートアップの世界においても、メソッドは大流行り。様々なメソッドが考案され、何万円もかかるワークショップに人が集まりますが、ではその投資に見合うリターンがあったという話をどれだけ聞くか。成功した人は静かにしているからでしょうか。

個人およびチームの能力や創造性といったものは、そこらのフレームワークやメソッドよりもはるかに大きな成果をもたらしえるものですし、それらを引き出すための個人のモチベーションやチームの相互理解に焦点を当てるべき、という著書の主張には強く共感します。僕自身、仕事の中ではもちろん各種のフレームワークやメソッドを活用します。しかし、少なくともフレームワークやメソッドが、それらの人の気持ち「より」重視されるのはとんでもない間違いでしょう。それで事業が成功へ近づくならともかくとして、多くの場合は事実は逆だと示されているのですから。

僕はデザイン業を名乗りつつ、実際の仕事はステークスホルダー間の調整という役割が強いです。ステークスホルダーの中にはクライアントの事業者もいればもちろんユーザーもおり、パートナー企業もおり、ひいては社会全体も含まれ、それぞれのニーズを理解して、それを満たせるようなサービスのカタチを考えることが、仕事の大きな割合を占めています。実はその後デザインに落とし込むことは、重要ではあるもののそれほど創造的な作業ではありません。それこそフレームワークに落とし込めば70-80%くらいは完了します。

ビジネスであっても、顧客は人間であり、チームも人間であり、そこに生じるのは人間関係です。であれば、いかに利益を得られたとしても、人間の気持ちを理解して尊重しないで、豊かな職業生活だったり、もっといえば豊かな人生だと言えるでしょうか。