デジタル・ルネッサンス:アカデミズムはバージョンアップする


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昨日は http://astamuse.com/  という知材のデータベース化とイノベーションの創発を活性化するサービスをやっている以前の同僚と会っていました。その中でアカデミズムのあり方についていろいろと議論をしたので、ここにメモを残しておきます。

僕は大学というプラットフォームでアイデアの実用化をやろうとしましたが、研究資金が途中で尽きてしまう、研究者のキャリアへのインセンティブがない、製品化に必要なスキルやリソースが足りないといった理由でそれは実現できませんでした。

ユビキタスコンピューティング研究がなかなか市場で実を結ばないうちにNestのようなものが広く売れるようになったり、SFCの電気自動車ベンチャーが足踏みしている間にTeslaが成功するなど、イノベーションの実用化にはシリコンバレー型のスタートアップエコシステムの方が成功しています。また今回のSTAP細胞の問題は、科学者の誠実さや、権威のあるジャーナルの査読の信頼性に対して社会が抱いていた信頼が実はそれほどのものではないと知らしめることになり、かつネットのオープンなピアレビューの力を見せつけました。

現在使われている「アカデミズム」の概念は、活版印刷というイノベーションによって知識の流通が飛躍的に効率化されて多くのイノベーションが起こるようになったルネサンス期に成立したものです(アカデミーという言葉の語源はプラトンがアテネに開いた学校)。それはヨーロッパ中世の暗黒時代を乗り越え、前世紀半ばまで続いた近代の繁栄をもたらしました。多くの歴史家や社会学者が、そうした近代が1960年代から終焉を迎えつつあり、社会システムが様々な面で刷新されつつあると考えています。

その大きな理由として、最初はアナログの電子メディア、そしてインターネットというより革新的なメディアの提供により、社会を構成する基盤となるコミュニケーションや知識の流通が劇的に効率化されたことが挙げられます。現代はルネサンス以来の知の爆発の時代となっています。そうした中で、既存のメディアアーキテクチャを前提としたアカデミズムの仕組みは、シリコンバレーのスタートアップ経済圏や、インターネットを通じたピアレビューなどの挑戦を受けているという認識が必要です。

最初に起きるのは、間違いなくアカデミシャンからのバックラッシュです。なぜなら、アカデミシャンはその囲い込まれた権威付けのインセンティブを持っているからです。しかし、新しいメディアアーキテクチャを用いてアカデミズムを刷新せよという社会からのプレッシャーは強まっていくでしょう。そうした新しいアカデミズムの担い手は、既存のアカデミズムのコアではなく、その周縁、おそらくウェブ産業およびスタートアップ経済との接点から現れるでしょう。

僕がずっと取り組んでいるのは、研究/事業者を問わず生み出された優れたシーズを、ユーザーと市場において意味のあるプロダクトに仕立て上げて、イノベーションを具現化することです。日本でも、スタートアップの方法論がイノベーションの実現方法として定着しつつある中で、製品化の技法としてやはりシリコンバレー周辺でイノベーションの製品化のために培われたHCD/UX/デザイン思考についても実践を通じて広めていきたいと思っています。