はじめに:体験をデザインするということ


2013年の夏、私児玉哲彦はデザイナーとして日本のIT企業で働いています。これまでは、モバイルアプリのスタートアップで働いたり、大学でUIデザインの研究に携わったりしてきました。気付けば、20年ほどインタラクティブな体験のデザインに取り組んできました。

この20年間の間に、社会はITの進歩によって大きく変わりました。PC/インターネット/ウェブ/スマートフォンなどの情報プラットフォームが普及し、私たちの生活や仕事のスタイルを大きく変えてきました。これまで人の手や、アナログなメディアや場を通して行われてきたサービスが、ITサービスに置き換えられてきました。

このような変化の中で、ITに限らない事業活動全般において、このブログの主要なテーマである「体験のデザイン」が求められるようになってきました。電子機器のような製造業、物販、飲食、果ては公共サービスにいたるまで、顧客に与える体験の差が、事業の成果の差に結びつくようになっています。

デザインにおける体験(Experience)という言葉が用いられるようになってきたのは、1990年代に、当時Appleに在籍していたドナルド・ノーマン博士らが最初だといわれています。(ノーマン博士が興したコンサルティング企業ニールセン・ノーマン・グループによるUser Experienceの定義

このような若い分野であることから、体験のデザインについての体系的な理解はまだまだ始まったばかりであり、実践とアカデミズムの双方で活発にナレッジが生み出されています。特に、Appleに代表されるIT企業やIDEOなどのデザインスタジオ、スタンフォード大学らによって多くの取り組みがなされてきたアメリカ西海岸がその大きな発信地となっています。

私は日本の東京で暮らし、働きながら、体験のデザインの実践に取り組んでいます。デザインは立派な学問の対象であると信じていますが、同時にデザインの目的は人の暮らしや働き方に影響を与える最終的なプロダクトにあると考えるためです。

かつての研究の中で、あるいは仕事の中では、日々多くの学びを得ています。本サイトにおいては、それらの学びを整理してまとめていきたいと思います。

本サイトが、日本あるいはIT業界にとどまらず、デザインによって個々の事業、ひいては人々の日々の体験を良くすることに、わずかばかりでも貢献できれば幸いです。